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海外移住すると税金はどうなる?出国するときに出国税はかかる?

2025-01-09

海外移住で日本の税金はどうなる?

海外移住を検討する際、年金と並んで気になるのが税金の問題です。「海外に移住したら、日本の税金はどうなるの?」「税金は二重払いになるの?」「出国時に税金を支払う必要があるの?」など、様々な疑問や不安があるかと思います。海外移住をすると、日本の税法上の「居住者」または「非居住者」のどちらかに区分され、それによって課税関係が大きく変わります。ここでは、海外移住によって日本の税金がどのように変わるのか、所得税、住民税、相続税・贈与税、固定資産税のそれぞれについて、基本的な考え方と注意点をわかりやすく解説していきます。

所得税

日本の所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に区分し、それぞれ異なる課税方法を定めています。「居住者」とは、日本国内に住所があるか、または現在まで引き続いて1年以上居所がある個人を指します。一方、「非居住者」とは、居住者以外の個人を指します。海外移住する場合、原則として、日本を出国する日までは「居住者」として扱われ、出国日の翌日からは「非居住者」として扱われます。居住者は、全世界所得(日本国内で得た所得だけでなく、海外で得た所得も含む)に対して所得税が課税されます。一方、非居住者は、国内源泉所得(日本国内で発生した所得)に対してのみ所得税が課税されます。つまり、海外移住後は、日本国内で発生した所得(例えば、不動産の賃貸収入や、日本の株式の配当など)に対してのみ、所得税を納める必要があるということです。ただし、非居住者であっても、日本国内に恒久的施設(支店や事務所など)を有する場合や、一定の要件を満たす場合は、全世界所得に対して課税されることがあります。

非居住者の定義

所得税法上の「非居住者」とは、「居住者」以外の個人を指します。「居住者」とは、日本国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいいます。「住所」とは、その人の生活の本拠のことです。生活の本拠かどうかは、客観的事実によって判定されます。例えば、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の状況、資産の所在などを総合的に考慮して判断されます。「居所」とは、その人の生活の本拠ではないものの、現実に居住している場所のことです。海外移住する場合、通常は、日本国内に住所を有しないこととなるため、非居住者となります。ただし、出国期間が短い場合や、生活の本拠が日本にあると判断される場合は、居住者として扱われることがあります。例えば、単身赴任で一時的に海外に滞在する場合などは、居住者として扱われる可能性が高いです。非居住者に該当するかどうかは、個別の状況によって判断が異なるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

国内源泉所得とは

非居住者に対して課税される「国内源泉所得」とは、所得税法で定められた、日本国内で発生した所得のことです。具体的には、以下のような所得が該当します。

  • 日本国内にある不動産の貸付や譲渡によって生じた所得
  • 日本国内にある資産の運用または保有により生ずる所得
  • 日本国内で行う事業から生ずる所得
  • 日本国内で支払われる給与、報酬、年金など
  • 日本国内の法人から支払われる利子、配当など
  • その他、日本国内を源泉とする所得

例えば、海外移住後も日本国内に所有しているマンションを賃貸に出している場合、その賃貸収入は国内源泉所得となり、所得税の課税対象となります。また、日本の銀行に預けている預金の利子や、日本の株式の配当なども、国内源泉所得となります。これらの所得については、原則として、日本で源泉徴収が行われます。源泉徴収とは、所得を支払う側(例えば、不動産の借主や、配当を支払う会社など)が、所得税を差し引いて、国に納付する制度です。ただし、源泉徴収されない所得がある場合や、源泉徴収された税額が過大な場合は、確定申告をすることで、所得税の精算をすることができます。

住民税

住民税は、1月1日時点で日本国内に住所がある人に対して課税される地方税です。海外移住する場合、原則として、1月1日時点で日本に住所がない場合は、その年の住民税は課税されません。ただし、年の途中で出国する場合は、注意が必要です。例えば、6月に出国する場合、その年の1月1日時点では日本に住所があるため、その年の住民税は課税されます。この場合、出国前に納税管理人を選任し、住民税の納付を委任する必要があります。納税管理人とは、納税義務者に代わって、納税に関する手続きを行う人のことです。納税管理人には、親族や友人、税理士などを選任することができます。また、出国前に住民税を全額納付することも可能です。住民税は、前年の所得に対して課税されるため、出国する年の前年に所得があった場合は、出国後も住民税の納税通知書が届くことがあります。この場合は、納税管理人を通じて納税するか、日本に帰国した際に納税する必要があります。住民税の取り扱いは、市区町村によって異なる場合があるため、出国前に必ず確認しておきましょう。

住民税の注意点

年の途中で出国する場合、住民税の取り扱いについて、以下の点に注意が必要です。

  • 1月1日時点の住所: 住民税は、1月1日時点の住所地で課税されます。例えば、1月2日に出国した場合でも、1月1日時点では日本に住所があるため、その年の住民税は課税されます。
  • 納税管理人の選任: 年の途中で出国する場合は、出国前に納税管理人を選任し、市区町村役場に届け出る必要があります。納税管理人には、親族や友人、税理士などを選任することができます。
  • 住民税の精算: 出国する年の住民税は、出国前に全額納付するか、納税管理人を通じて納付する必要があります。
  • 帰国後の住民税: 帰国後、再び日本に住所を有することになった場合は、その年の1月1日時点の住所地で住民税が課税されます。

住民税の取り扱いは、複雑な場合があるため、出国前に必ず市区町村役場に確認し、適切な手続きを行いましょう。

相続税・贈与税

相続税・贈与税は、財産を相続したり、贈与を受けたりした場合に課税される税金です。海外移住した場合でも、日本の相続税・贈与税が課税される場合があります。日本の相続税法では、相続や贈与によって財産を取得した人が、日本国内に住所がある場合、または、日本国内に住所はないものの日本国籍を有し、かつ、被相続人(亡くなった人)または贈与者(財産をあげた人)もしくは相続人(財産をもらった人)または受贈者(財産をもらった人)が、相続開始前または贈与前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある場合には、原則として、全世界の財産に対して相続税・贈与税が課税されます。つまり、海外に移住しても、日本国内に財産がある場合はもちろん、国外にある財産(例えば、海外の銀行預金や不動産など)も、相続税・贈与税の課税対象となる可能性があるということです。ただし、相続や贈与によって財産を取得した人が、日本国内に住所がなく、かつ、日本国籍を有しない場合で、被相続人または贈与者が外国に居住する外国人等(国外居住外国人等)である場合には、国外財産は課税対象となりません。また、日本と相続税に関する租税条約を結んでいる国に移住する場合は、租税条約に基づいて課税関係が調整されることがあります。

国外転出時課税

2015年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されます。これを国外転出時課税といいます。
国外転出時課税の対象となる「一定の居住者」とは、原則として、国外転出をする日前10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間のうち合計5年を超える期間、国内に住所又は居所を有していた日本国籍を有する方などです。
国外転出時課税は、国外転出の時に対象資産を譲渡したものとみなして、その対象資産の含み益に対して所得税及び復興特別所得税を課税するものです。

固定資産税

固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している人に課税される地方税です。海外移住した場合でも、日本国内に不動産を所有している場合は、引き続き固定資産税が課税されます。固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税され、納税通知書は、通常、4月頃に送付されます。海外移住後は、納税通知書の送付先を、納税管理人の住所に変更する必要があります。納税管理人を選任し、市区町村役場に届け出ることで、納税通知書を納税管理人に送付してもらうことができます。また、固定資産税の納付は、口座振替やクレジットカード払いを利用することも可能です。海外からでも、インターネットバンキングなどを利用して、納付することができます。固定資産税を滞納すると、延滞金が加算されたり、財産が差し押さえられたりする可能性があるため、注意が必要です。海外移住後も、日本国内に不動産を所有し続ける場合は、固定資産税の納税義務があることを忘れずに、適切な手続きを行いましょう。

出国税(国外転出時課税)とは?

出国税(国外転出時課税)とは、一定の条件を満たす居住者が国外転出(日本から海外へ移住)する際に、保有している有価証券などの含み益に対して所得税及び復興特別所得税が課税される制度です。これは、資産の含み益に対する課税の繰り延べを防ぐことを目的として、2015年7月1日以後の国外転出について適用されています。出国税は、すべての海外移住者に適用されるわけではなく、対象となる条件や資産が定められています。ここでは、出国税(国外転出時課税)の対象者、対象となる資産、税率、申告・納付方法などについて、詳しく解説していきます。

出国税の対象者

出国税(国外転出時課税)の対象となるのは、以下の2つの条件を両方満たす人です。

  1. 出国時に、1億円以上の対象資産を所有等していること
  2. 原則として、国外転出をする日前10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間のうち合計5年を超える期間、国内に住所又は居所を有していた日本国籍を有する方など

つまり、多額の資産を持っている人が、日本での居住期間が長い場合に、出国税の対象となる可能性があります。
なお、日本国籍を有しない方であっても、上述の在留資格を有する方で、国外転出をする日前10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間のうち合計5年を超える期間、国内に住所又は居所を有していた場合は対象となります。

出国税の対象となる資産

出国税(国外転出時課税)の対象となる資産は、以下の通りです。

  • 有価証券(株式、投資信託、国債、地方債、社債など)
  • 匿名組合契約の出資の持分
  • 未決済の信用取引、発行日取引および先物取引 など

土地や建物などの不動産、預貯金、現金、貴金属などは、出国税の対象となりません。また、有価証券であっても、取得価額が1億円未満の場合は、対象となりません。

出国税の税率

出国税(国外転出時課税)の税率は、15.315%(所得税及び復興特別所得税)です。これは、出国時に所有している対象資産の含み益に対して課税されます。含み益とは、取得価額よりも時価が高い場合の、その差額のことです。例えば、1億円で購入した株式が、出国時に2億円に値上がりしていた場合、1億円の含み益に対して、15.315%の税金が課税されることになります。
計算式は以下のとおりです。

(出国時の時価 ー 取得価額)× 15.315% = 出国税

出国税の申告・納付方法

出国税(国外転出時課税)の対象となる場合は、確定申告書の提出と納税が必要です。確定申告書の提出期限は、原則として、出国した年の翌年の3月15日です。納税期限も、原則として、出国した年の翌年の3月15日です。ただし、納税管理人を定めて「納税管理人の届出書」を提出した場合には、その納税管理人が、納税者の代わりに申告・納付手続きを行うことになります。確定申告書には、対象資産の種類、数量、取得価額、出国時の時価などを記載する必要があります。また、対象資産の取得価額や出国時の時価を証明する書類(取引報告書や残高証明書など)を添付する必要があります。出国税は、高額になる可能性があるため、事前に税理士などの専門家に相談し、申告・納付方法について確認しておくことをおすすめします。

納税猶予制度

出国税(国外転出時課税)には、納税猶予制度があります。これは、一定の要件を満たす場合に、出国税の納税を最長10年間猶予することができる制度です。納税猶予を受けるためには、出国までに「納税猶予の届出書」を税務署に提出し、担保を提供する必要があります。担保は、有価証券や不動産などが対象となります。納税猶予期間中に、対象資産を譲渡したり、国外転出をしたりした場合は、猶予されていた税額を納付する必要があります。また、納税猶予期間中は、毎年、「継続適用届出書」を税務署に提出する必要があります。納税猶予制度を利用することで、出国時の納税負担を軽減することができますが、手続きが複雑であるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

海外移住前にやっておくべき税金の手続き

海外移住をする際には、税金に関する様々な手続きが必要になります。これらの手続きを怠ると、出国後に税金の未納が発生したり、二重課税が生じたりする可能性があるため、注意が必要です。ここでは、海外移住前にやっておくべき主な税金の手続きについて、具体的に解説していきます。

納税管理人の選任

海外移住後も、日本国内で所得が発生する場合(不動産の賃貸収入など)や、日本国内に固定資産を所有している場合は、日本の税金を納める必要があります。しかし、非居住者は、日本国内に住所がないため、自分で納税手続きを行うことができません。そこで、必要となるのが「納税管理人」の選任です。納税管理人とは、納税義務者に代わって、納税に関する手続き(確定申告書の提出、税金の納付、税務署からの書類の受け取りなど)を行う人のことです。納税管理人には、親族や友人、税理士などを選任することができます。納税管理人を選任した場合は、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を、納税地を所轄する税務署に提出する必要があります。この届出書は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。納税管理人を選任しない場合は、出国前に、税務署に相談し、納税方法について確認しておく必要があります。また、出国後に、日本国内で所得が発生した場合は、確定申告が必要になる場合があります。確定申告は、納税管理人を通じて行うか、または、一時帰国して自分で行う必要があります。

確定申告

海外移住する年の1月1日から出国日までに、日本国内で所得があった場合は、原則として、出国までに確定申告をする必要があります。例えば、給与所得があった場合は、勤務先で年末調整が行われますが、年末調整の対象とならない所得(不動産所得、事業所得、譲渡所得など)があった場合は、確定申告が必要です。また、出国税(国外転出時課税)の対象となる場合は、出国までに確定申告と納税が必要になります。確定申告書の提出先は、納税地を所轄する税務署です。確定申告書は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできるほか、税務署や市区町村役場でも入手できます。確定申告書の作成方法がわからない場合は、税務署に相談するか、税理士に依頼することをおすすめします。出国までに確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があるため、注意が必要です。

住民税の精算

住民税は、1月1日時点で日本国内に住所がある人に対して課税される地方税です。年の途中で海外移住する場合は、出国前に、その年の住民税を精算する必要があります。住民税の精算方法は、市区町村によって異なりますが、一般的には、以下のいずれかの方法で行います。

  • 出国前に全額納付する: 出国日までに、その年の住民税を全額納付する方法です。
  • 納税管理人を通じて納付する: 納税管理人を選任し、納税管理人に住民税の納付を委任する方法です。
  • 普通徴収に切り替えて納付する: 住民税の納付方法を、特別徴収(給与からの天引き)から普通徴収(自分で納付)に切り替えて、出国後に納付する方法です。

どの方法を選択するかは、個人の状況や、市区町村の規定によって異なります。出国前に、必ず市区町村役場に確認し、適切な手続きを行いましょう。住民税を精算せずに海外移住すると、未納の住民税に対して延滞金が加算されたり、財産が差し押さえられたりする可能性があるため、注意が必要です。

まとめ:海外移住と税金、専門家への相談も検討を

海外移住と税金に関する手続きや注意点について解説してきました。海外移住をすると、日本の税法上の「居住者」または「非居住者」のどちらかに区分され、それによって課税関係が大きく変わります。所得税、住民税、相続税・贈与税、固定資産税など、様々な税金について、海外移住後の取り扱いを理解しておく必要があります。また、一定の条件を満たす場合は、出国税(国外転出時課税)の対象となる可能性もあります。海外移住前には、納税管理人の選任、確定申告、住民税の精算など、様々な手続きが必要です。これらの手続きを怠ると、出国後に税金の未納が発生したり、二重課税が生じたりする可能性があるため、注意が必要です。海外移住と税金に関する手続きは、非常に複雑で、個人の状況によって異なる場合も多いため、自分だけで判断せず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、最新の税法や、個別の状況に合わせて、適切なアドバイスやサポートをしてくれます。また、税務署や市区町村役場でも、税金に関する相談を受け付けています。海外移住は、人生における大きな決断です。税金に関する手続きをしっかりと行い、安心して新生活をスタートさせましょう。そして、海外での生活を充実したものにするためにも、税金に関する正しい知識を持ち、適切に対応していくことが大切です。

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